ピアノの保管方法


ピアノにとって最大の敵は過乾燥。正しい管理でピアノの寿命は何倍にも延びます

 1) ピアノへのダメージが最も大きい床暖房


実際に調律にお伺いしていると、ピアノが最もダメージを受けるのは床暖房であると
つくづく実感しています。過乾燥によって、ピアノの命である響板にひび割れが生じるのです。
ピアノを鳴らすたびに、ビリビリと嫌な雑音が出るようになります。
床暖房のある部屋には設置されないのが一番ですが
やむを得ない場合は、お部屋に適した加湿器を絶え間なく稼働させることが必要です。
 
 【加湿器を選ぶ際のマメ知識 〜オススメ4方式〜 】
 
  1)スチーム式: 
  水を沸騰させて水蒸気を放出する方式。加湿力が強く、加湿しすぎる場合が
  あるため使用には注意が必要です。暖房をフル稼働させる時期に適しています。
  稼働音はシューシューという沸騰音と、時折タンクに水が落ちる音。
  熱を発するので、小さなお子様がいらっしゃるご家庭では注意が必要です。

 2)気化式:
  水を専用フィルターに吸い上げ、ファンで送風して気化させる方式。
  熱を加えないため消費電力も低いのですが、一気に加湿する力強さはありません。
  稼働音は、モーター音と、ファンの回転音。
  熱くならないので小さなお子様がいらっしゃるご家庭でも安心して使えます。

 3)温風気化式:
  ドライヤーのように温かい風で水を気化させる方式。
  熱を加える分、気化式より加湿力が強く、消費電力も高くなります。
  稼働音は、モーター音。(ファンがついている場合はファンの回転音)
  
 4)エコ加湿器
  フィルターを水に浸して自然気化させるという、原始的な加湿方法。
  様々なデザインのものが販売されており、お部屋のインテリアとしても人気です。
  防音カプセル内のような狭い空間に有効。
  観葉植物の世話をするように水を注ぐだけで、やさしく自然に潤います。
  電気も使わず発熱しないので、小さなお子様がいらっしゃるご家庭にもお勧めです。
  
 
 【まとめ】
  ピアノにとってなにより重要なポイントは加湿力。
  お勧めできるのは、お住まいの地域やお部屋のサイズに応じた、上記の4方式です。
  ちまたで人気の超音波式については、周辺が水でぬれてしまうこと、給水タンク内の
  雑菌も一緒に放出されるという衛生面のデメリット、そして、広い空間に置いた時
  加湿器の周辺だけが加湿されるという実体験もあり、ピアノを守る目的で
  使用される場合においては、当店では特にはおすすめしておりません。


 2) 変色と響板割れを引き起こす陽当たりの良い窓際


直射日光の当たる場所は避けたいところです。
木目のピアノの場合は変色しますし、それ以上にこわいのは、響板割れのリスクです。
南側、西側の窓を背にして設置されないのが一番ですが、やむを得ない場合は
次の対策が必要です。

 1)窓に遮光カーテン(ブラインド)をつけて直射日光を遮断する
 2)ピアノの背中全体を覆うように、薄い板をピアノと窓の間に置く

【もしお持ちのピアノが響板割れを起こしたら・・・】

ひび割れの隙間に接着剤を流し込むような修理をする修理業者に
修理を依頼されることだけはないように、ご注意ください。
響板は、ピアノの命です。接着剤は音の伝達を止めてしまい、音量や響きがなくなります。

ひび割れの隙間に、埋め木をするのが正しい修理方法です。
埋め木の接着には、膠(ニカワ)を使わなければなりません。
また、埋め木修理は、湿度の低い冬場にのみ行うことが出来ます。
夏場は湿度で木が膨張して、響板割れの隙間が狭まるため、
本来の割れをぴったり埋めることができないからです。
詳細は、こちらの12項をご覧ください。→http://www.piano-clinic.jp/select


 3) 夏場の不具合原因ナンバーワン。高湿度がピアノに及ぼすダメージ


過乾燥のように、ピアノに致命的なダメージを与えることはない湿気ですが、
湿気が多過ぎると、ピアノ内部は大きく変化してしまいます。

最も多いのは、センターピンの周りに巻いてあるフェルトや木そのものが
膨張して動きが悪くなり、鍵盤がスムーズに動かなくなる不具合です。
鍵盤を離しても戻ってこなかったり、鍵盤が重たくなるなどの症状が出ます。

直すには一度古いピンを抜き、膨張してしまっているフェルト部分を
専用のヤスリで削りながら、丁度良い動きのセンターピンを選定し、交換します。
1音につき4つの軸に作業を施しますので、鍵盤88音(ダンパーだけは66本)
全てを直すには、330回同じ作業を繰り返さなければならず、手間も時間もかかります。

お住まいの地域によっては、年間を通して湿度が高いところもありますので
思い当たる方は、お部屋の広さに応じた除湿器を絶え間なく稼働させることが必要です。

 【除湿器を選ぶ際のマメ知識 〜オススメ2方式〜 】

 1)コンプレッサー式:
  金属プレートを冷やしてそこに水分を付着させて除湿をする方式。
  関西、中部、関東のような高音多湿の地域で有効。
  消費電力はデシカント式の約3分の1。
  稼働音が大きいため、あくまでも除湿という目的を最優先にされる方にお勧めです


 
2)デシカント(ゼオライト)式:
  乾燥剤に水分を吸着させることで除湿する方式。
  水分が吸着した乾燥剤をヒーターで温める構造のため、消費電力は
  コンプレッサー式の約3倍。日本海側の九州、四国、中国地方や新潟のような、
  冬でも湿度が高い場所に適しています。
  

 【できるだけ使用を避けたいピアノ専用の除湿グッズ 】
 
ピアノ内部に棒状の電熱ヒーターを設置するという類の製品は、室温とピアノ内部に
 温度差が生じて響板が反ったり割れたり、ピアノの寿命が縮む原因となる
 場合があります。実際に当店でも、この類の製品が大きな原因と判断せざるを得ない
 響板割れのピアノを複数台修理しました。
 屋久島、八丈島、ハワイなどのような、年間を通して極めて湿度の高い地域など、
 製品を使用するメリットが、リスクやデメリットを大きく上回るような場合には良いかも
 しれませんが、そうでない場合、私共は使用をお勧めしておりません。
 これはあくまでも、私共の見解です。身体を診てもらう主治医と同様に、
 皆様のピアノやお部屋の環境を一番よくご存知の技術者さんにもご相談されると
 良いと思います。
 私共は、ピアノ内部ではなく、部屋全体の湿度調整をお勧めします。
 
  【まとめ】
  
ピアノにとってなにより重要なポイントは除湿力。
  お勧めできるのは、お住まいの地域やお部屋のサイズに応じた、上記2方式の
  除湿器です。それぞれに長所、短所がありますので、お部屋に適した除湿器を
  使い分けていただくようお勧めしております。


 4) 急激な温度変化がピアノに及ぼすダメージ


エアコンを付けたり消したりで、短時間で高い温度差が生じてしまうお部屋は
ピアノにとって過酷な環境です。
特に真冬の場合、急激な温度変化でピアノ内部の部品や弦に結露が生じることもあります。

上記(3)のように、ハンマーの動きが悪くなったり、メカニックが大きく変化して
音色がくぐもったり、部品が錆びて動きが悪くなる等、様々な不具合が生じます。
ピアノの部屋の温度はできるだけ急激な変化をさせないよう、
できるだけ一定に保つのが理想的です。

とはいえ、一日中ピアノのためだけにエアコンをつけておくわけにはいかない
という方がほとんどだと思います。
お部屋に暖房を入れる際には、最初は設定温度を控えめにして、
時間をかけて徐々にご希望の室温になるよう調整しましょう。


 5) 台所付近に置かれたピアノが、いつしか揚げ物のようになるリスク



台所付近に置かれたピアノと、台所から離れたところに置かれたピアノとでは
経年による汚れ方が随分ちがってきます。

長い年月をかけて、少しずつ少しずつ、空気中に飛散した油汚れなどが付着していきます。

台所付近に設置しないのが理想ですが、やむを得ない場合は、
ピアノ全体をカバーで覆うことをお勧めします。
ピアノ専用として作られているカバーは、特別な素材を使っているわけではありませんので、専用のものである必要はありません。布屋さんで販売されている普通の布を
ピアノ全体にかぶせるだけでも十分です。


 6) ピアノの部屋で喫煙するとピアノも喫煙させられるという事実


鍵盤や外装のみならず、内部のハンマーやメカニックまで、タバコのヤニで黄ばんでしまい、
強烈なタバコ臭を発するピアノをたくさん見てまいりました。

ピアノは生き物です。木は息をしています。
ピアノが置いてある部屋で喫煙されると、ピアノ自体も喫煙することになります。
喫煙者の肺がタバコで黒くなるのと同じことが、ピアノでも起こります。
万が一ピアノを手放される場合、買い取り値にも影響します。

ちなみに当店では、ヤニやタバコ臭のついてしまったピアノは一切仕入れておらず、
中古ピアノを仕入れる際の必須確認項目となっています。


 7) 響板割れ発生件数ナンバーワン!このようなお部屋には要注意


マンションや防音室などの気密性の高い部屋で、
なおかつ南側に面していて、
冬でも暖房なしで室温が28度以上になるようなお部屋。

実際に調律にお伺いする中で、このようなお部屋では多くのピアノに
響板割れが発生しています。
室内が乾燥室さながらの環境になり、殆どのピアノで響板が割れやすくなってしまいます。
できることなら、このようなお部屋に設置されないのが一番ですが、
やむを得ない場合、湿度管理にはかなりの注意が必要です。


【ピアノを良い状態に保つ方法 まとめ】

1)できるだけ床暖房の上に設置しない。やむを得ない場合は断熱シートと断熱ボードの上に設置する
2)冬場は、設置場所に適した加湿器を絶え間なく稼働させる
2)夏場は、設置場所に適した除湿器を絶え間なく稼働させる
3)陽当たりの良い窓際に設置しない。やむを得ない場合はピアノ背面に対策を施す
4)真冬の急激な寒暖差で結露を発生させないよう、室温は時間をかけて徐々に上げる。
5)できるだけ台所付近に設置しない。やむを得ない場合はピアノをカバーで覆う
6)ピアノの部屋で喫煙しない
7)高気密、南向きで、冬も暖房なしで28度以上になる部屋にやむなく設置する場合、湿度管理を徹底する




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